最新研究から読み解く「意識拡大」と治療の可能性
アマゾンに古くから伝わるアヤワスカ。この飲み物は、なぜ多くの人の心を癒し、人生観を変えてしまうのでしょうか。
そのメカニズムが、近年の脳科学研究により少しずつ明らかになってきています。
本記事では、2023年に発表されたシステマティックレビュー
「Neural Network Modulation of Ayahuasca」
をもとに、アヤワスカが脳に与える影響を解説します。
アヤワスカとは
アヤワスカは、以下2つの植物を煮出して作られる伝統的なスピリチュアルドリンクです。
Psychotria viridis:DMTを含む
Banisteriopsis caapi:DMTを経口摂取可能にするMAO-A阻害剤を含む
DMTは通常体内で速やかに分解されてしまいますが、カーピのツルがその分解を防ぐことで、経口摂取が可能になります。
この組み合わせによって、独特のアヤワスカ体験が生まれます。
脳の中で起きていること
アヤワスカは脳内の5-HT2Aセロトニン受容体に作用し、知覚、感情、思考を司るネットワークの働きを変えます。
特に注目されているのは「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」です。
DMNは、自己に関する思考や反芻、不安の源にもなるネットワークであり、うつ病や不安障害、PTSDで過活動に傾きます。
アヤワスカ摂取後、このDMNの活動は低下します。
その結果、普段は独立して働く脳領域間の交流が促進され、固定された思考パターンに柔軟性が生まれます。
多くの人が語る「意識が拡大した」「自我が薄れた」という主観体験の背景には、このネットワーク再編成があると考えられています。
感情と記憶回路の活性化
研究では以下の領域の活動増加も確認されました。
扁桃体(感情) 島皮質(身体感覚) 海馬(記憶) 前帯状皮質 ACC(感情調整・注意制御)
これらはうつ病では機能低下しやすい領域です。
アヤワスカは摂取後数時間から数週間にかけて抗うつ効果が続く可能性が示されています。
長期使用者の脳構造の変化
宗教的文脈で継続してアヤワスカを用いる人々の脳では、以下の構造変化が報告されています。
脳梁の肥厚(左右脳の連携強化) 皮質領域の構造変化(前頭部・後頭部の一部が薄くなる一方、ACCなどが厚くなる) 自己超越性(Self-transcendence)傾向の高さ
初期研究段階ですが、精神的な回復力を支える脳構造への変化が潜在的に起こりうると考えられています。
DMNを「針が引っかかったレコード」に例えると、アヤワスカはその針を一度リセットし、脳全体の柔軟性を回復させる働きがあると言えます。
トラウマ 依存症 慢性的な反芻思考
こうした固定化されたループから脱するきっかけを生む可能性があります。
これがアヤワスカセレモニーの治癒力の核心といえます。
アヤワスカが脳にもたらす変化
研究からわかってきたのは、アヤワスカが脳に対して以下のような重要な作用をもたらす可能性があるということです。
まず、過剰に働きやすいデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の活動が低下します。これにより、反芻思考や不安といった負のサイクルから解放される余地が生まれます。
さらに、脳内のネットワークは再編成され、普段は独立して働いている領域同士が互いに交流し始めます。その結果、新しい視点や認知の柔軟性が促され、固定された思考パターンがほぐれていきます。
感情や記憶を司る回路も活性化します。うつ病で働きが鈍りがちな領域が再び機能を取り戻すことで、抗うつ効果やトラウマ治療につながる可能性が示されています。
さらに、長期的には脳構造そのものにも変化が見られるという報告があります。これらの変化は、精神的な回復力の向上や、自己超越感と呼ばれるスピリチュアルなつながりの感覚と関係していると考えられています。
このように、アヤワスカは脳の「停滞した状態」を揺り動かし、心に新しい選択肢を取り戻させる働きを持つ可能性があります。今後の研究とエビデンスの蓄積が期待されます。